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人・人・人の汽車の旅
   〜ウルムチから北京へ
      その1

                                               

著作:垂水章子

 私は北京の大学に留学している日本人。夏休みを利用して友人3人と40日間も新疆を旅した帰り
のながい旅の思い出である。





 汽車に乗る2日前、ちょうどその日が切符の売り出し開始の日のはず。眠い目を必死にこすりなが
ら、午前7時に宿舎を出てウルムチ駅へと向かう。3人連れの旅なのだが、他の2人は敦煌にほど近
い、柳園という所までが次の目的地。私はといえば、どうしても授業の登録の関係で、その日に北
京に向かわなければならない。とにかく3人の切符を購入する必要があるのだ。めざす切符は、ウ
ルムチ-北京西70号である。3人が手分けして別の列に並ぶ。まず、Fさんが、二人の目的地の柳園
までの2枚は確保し、しかし、私の並んだ窓口では中国で聞きなれた「没有(ないよ)」という一言が
かえってきた。Fさんが別の窓口に回り聞いてくれると、そこの人は意外に優しく「武威南(蘭州の1
つ手前の駅)までならあるよ」と言ってくれた。なんともいえぬ不安から解放されたのはいうまでもな
い。Fさんに感謝。途中から席はないけどとにかく北京に帰れる、切符を買った時点ではそれで大満
足だった。

                               

 中国汽車の旅での切符を手にいれるということの洗礼を受け、最後の旅行の締めくくりへ。63時間
の長旅の前にこの旅で最高の贅沢、とあるウルムチのホテルでケーキを食べた。
 いよいよ新疆との別れの日がやってきた。最後に美しいと聞いた、「天池」に行く。帰り道にバスが
故障。最後の最後まで油断できない。汽車の時間にを気にしているのに、運転手はあせらない。街
についてなんとか注文していた服を取り、ご飯を食べ、駅へ向う。



天池


 刻一刻と63時間の旅は近づいてくる。駅についてから、ちょっとした食べ物とビールを買い込ん
で、23時14分、2人とわかれて別の車両の、7号車に乗り込んだ。これから少しだけの一人旅の始
まりだ。とにかくこの40日間の新疆の旅の疲れがいっきに出たのか、日記を書き終えると、0時ごろ
にはぐっすり眠り込んでしまった。


                       

 汽車での第2日目が始まった。7時30分に起きる。よほど外国人が硬座(二等席)に座っているの
が珍しいのか、女の一人旅が不思議なのか、いろいろなところから話しかけられる。もちろん、質問
はすべて中国語。いつも決まって、最初の質問は「どこまでいくんだ」から始まる。最初の質問から5
問はだいたいいつも、同じである。録音でもして流したい、いけないとは思いながらそう考えてしま
う。心とは裏腹に、私はサービス精神からいやな顔一つすることなく、けっきょく何時間も質問に答
えていた。この時に、誰かとしゃべっていてもおかまいなしに、途中で割り込んで話そうとする人が
多い。「いいかげんにして。」心の中でそう叫びたくなる。そうそう、人の迷惑を考えず足をのばし2つ
の席を占領している人なんか、たまについにらんでしまったり。



 質問のとぎれたとき、しばし汽車中をみわたしてみる。家族一同で大はしゃぎしている人がいる。
二鍋頭の白酒(アルコール度50度以上蒸留酒)を飲みながら、ひまわりの種の皮を飛び散らかして
いる。にぎやかきわまりない。どこの国民も一緒だなあと考えながら、自分でも旅行気分にひたり、
軽くビールを口にする。ある人は、おなかをすかせた子供と自分のために、お湯くみの場所までいっ
たりきたりしている。なかなか混んでいて大変そうだ。そうかと思うと、一人さびしく窓の外をぼんや
り眺めている人がいる。出張だろうか、それとも観光なのだろうか、親に会いにいくのだろうか。反
対に私はどうみられているのだろうか。

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その2へつづく

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